Ⅶ ~交錯する想い~

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 ――――私、あの子に嫉妬したの?  呆然と動きを止めて、ヒナはくすんだ飴色の机を仰視する。  胸に広がる澱のように沈んだ黒い感情は、嫉妬なのだとはっきりわかった。  樹を奪われてしまう。自分から離れてしまう。  それはイヤだと強く思った。  樹はいつもヒナの傍にいてくれた。  父親が事故で亡くなった時も、ヒナが泣き疲れて眠るまで、ずっと傍に寄り添っていてくれた。  最後まで離れずヒナのそばにいてくれたのは、樹だけだった。 『ずっと傍にいるから、もう泣かないで。ボクがヒナを守ってあげる』  そう言って、樹はヒナが落ち着くまでずっと抱きしめてくれていたのだ。  抱きしめられると安心して、少し高めな彼の体温が心地よくて、ヒナはいつの間にか眠りに落ちていた。  泣き虫のヒナが涙を見せるたびに、いつも年下の樹が慰めてくれていた。  母の出張が多くなりだした当初、『泣き虫ヒナ。ひとりじゃ寂しいんじゃない?』そう言って意地悪な笑みを浮かべながら、毎日遅くまで居てくれた。泊まってくれることもしょっちゅうだった。  樹の言動の全ては、ヒナのためであり、彼女を心配してのものだった。  それが申し訳ないと思うと同時に、嬉しくもあった。  樹は言った。  ヒナを恋愛対象としてみていると。  その上で、自分を弟ではなくひとりの男として認めて欲しいと訴えてきた。  とても驚いたが、その言葉に心が浮き立ったのも事実だとヒナは思う。
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