Ⅶ ~交錯する想い~

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「オイちょっと待て、なに今の言葉。ヒナ? なんだよ、その如何にも恋する乙女的な顔は……しかも、溜め息って……ハッ」  何かを気付いたような類の顔に、ヒナは視線を向けた。  彼の顔は蒼白に変わり、唇を戦慄(わなな)かせている。 「お前まさか……あのエロガキを好きとか言わねえよな!?」  今度はその言葉に、ヒナの両眼がこぼれ落ちんばかりに見開かれる。  そして次の瞬間、ポンッとヒナの顔が真っ赤に染まってしまう。  熱くなる顔を両手で隠すようにして押さえつけるヒナを見て、類はワナワナと震えだし、 「ぎゃあぁぁッ、マジですか!」  そんなんありか―――ッ! と絶叫を残し、頭を抱えて机に突っ伏してしまった。 「きゃっ! いきなり大きな声出すのやめてっ。私が大声嫌いなの知ってるでしょ! ……類ちゃん、すみちゃんは今日お休みなの?」  赤い顔のまま両手で耳を覆い、話を逸らそうとヒナは質問を投げる。  机に顔を埋めたまま、類はボソリと呟いた。 「……うぅ、そーだよ、純人は休み。しばらく来ないってメールあった……」 「そうなんだ」  ヒナは小さく頷いた。  類の言葉通りなら、きっと凜の傍にいてあげたいと純人は思っているのだろう。  彼女が落ち着くまで純人は学校へは来ないだろうなとヒナは思った。  すると、突然机からがばっと身体を起こした類に、ヒナはギョッと飛び上がった。 「あーもう、そうはさせるか! ヒナ! ちょっと来いッ」 「え? あ、類ちゃん!?」  突然腕を掴まれ、グイグイと引っ張られるまま教室から連れ出されてしまう。  掴まれた腕を、渾身の力で引いたり振ったりしてみるが、ビクともしない。  類の強い力に戦きながら、廊下を引き摺られるようにしてヒナは歩かされる。  非難の声も全て無視され、ヒナは恐々と怯えながら類の後に続くしかなかった。
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