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「ホントに失礼だなもう! 一体なんなの、類ちゃん!?」
「しっかりしろ、ヒナ。あのガキはまだ小学生だ。つまり正真正銘のガキンチョなわけ。で、お前は17歳。あと3年で成人式を迎える大人の一歩手前。わかる?」
わかっていたが、目の前に現実を突きつけられて、胸をナイフで抉られたような痛みが走る。
唇を固く引き結び、青ざめながらヒナは小さく頷いた。
「いくら脳内が幼稚園児並みなヒナでも、現役小学生なんかとは釣り合わない。全く、全然、これっぽっちも。だから」
類にいきなり肩を掴まれて、ヒナはギクリと身体を強ばらせた。
「仕方ねえから、俺がヒナの彼氏になってやる。お前は俺を好きになれ」
唐突なその言葉に、ヒナの口がぽかんと半開きになる。
『だから』の後、なぜ『仕方ないから彼氏になってやる』というセリフが出てくるのか意味がわからない。
突然の展開に全く頭が付いていかなくて。
好きだと言われたわけでもないし、これは何かの罰ゲームではないかと訝しむ。
胡乱な目つきで、ヒナは真正面からじっと類を仰視した。
「でっけえ目でじっと見てんじゃねえよボケがッ! 恥ずかしーだろーがッ! 答えはイエスしか聞かねえッ!! オラ『はい』って言え!!」
地面を震わすほどの大音量、しかも怒号ともいえる命令口調に、ヒナは両手で耳を塞ぎ、飛び上がって驚いた。
「や、大声やめてっ!」
「さーん、にー、いちー、オラ『はい』と言えッ!!」
「ひぃっっ、はいぃッ!!」
耳元で、今まで以上の大音量で叫ばれて、ヒナは類からの告白の返事を脊髄反射で『イエス』と返してしまったのだった。
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