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「ふざけんな、ヒナ。俺が付き合ってやるって言ったら、お前嬉しそうにハイって言ったじゃん」
「ええっ!? 嬉しそうって……だってあれは類ちゃんが、」
――――怖い大声を出して脅かすからつい勢いで口から飛び出た。
そう言いかけたヒナに、類は一睨みして黙らせてしまう。
「は、なに? ヒナ、コイツの彼女になるって了承したの?」
ワントーン低い、恫喝の響きを滲ませる鋭い声に、ヒナの背がビクッとしなる。
「してな、」
「したの! だからエロガキ。俺の彼女に近付かないでくれる? 超不快だから」
慌てて頭を振って否定の言葉を紡ごうとしたヒナに、類の声が被さった。
「……ヒナ? ホント?」
「い、言ったか言わないか、どっちって聞かれたら、それは……ハイって言っちゃったんだけど、でも違うんだよ!」
樹の双眸が今までにないほどに剣呑さを帯びてゆく。
ヒナは全身を使って誤解だと訴えるのだが、今度は樹の言葉が重なった。
「は? 言ったの? 告白されて、了承した? ヒナはこの男が好きなの?」
責めるような樹の双眸に射貫かれて、立て続けに質問されて、発言する猶予すら与えられなくて。
追い詰められるような心理状態に置かれたヒナからは、急速に余裕が失われてゆく。
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