Ⅱ ~近所のお姉さん~

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Ⅱ ~近所のお姉さん~

「いただきまーす!」  やり遂げた感満載の笑みを浮かべてヒナはお行儀よく手を合わせる。  樹はテーブルに並んだ料理を目を点にしながら凝視した。 「ねえ、ヒナ。これは何かな?」 「カレーだよ! あと、サラダも作ったんだ、食べて食べて!」  満面の笑みでヒナは答えるのだが、樹は黙したまま、目の前の料理をじっと眺めた。  料理が悪いんじゃない。  ただ、見た目が完全におかしかった。  作っていたのは、ヒナが言うようにカレーとサラダだったはず。  けれど、テーブルに所狭しと小皿に盛られているのは、肉、ジャガイモ、人参、タマネギ、キノコ数種、カレールーが入ったお椀。そして、カレーと言ったクセに、何ものっていない寂しげな白米。  カレールーから一緒に煮込んだ材料だけを丁寧に小分けして、小皿に盛ってあったのだ。 「……ふうん。そうなんだ。カレーなんだ、コレ。でもね、ヒナ。なんでカレーがこんなえげつない事態に陥ってるの?」  思わず疑問が口を吐く。 「あのね、昔テレビでやってたんだけど」  ヒナは嬉々として話し出した。 「食べる順番ダイエットって言うんだって! 最初にお肉とかお野菜食べるの。で、最後にご飯。この順番は守らなくちゃダメだよ。やってみたかったんだこれ。すっごいダイエット出来るらしいよ!」  嬉しそうに語るヒナに、樹は痛む眉間を指で押さえた。
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