Ⅶ ~交錯する想い~

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 頭から熱いシャワーを浴びながら、ヒナは先ほど母に告げられた言葉を反芻していた。  それは、ヒナに行動を促す言葉だった。  気持ちは口に出さないと分かってもらえない。  ヒナが樹の本当の気持ちに気付けなかったように。  樹の告白は、ヒナにとって衝撃だった。  ヒナと同じように、彼もまた年齢差に囚われて苦しんでいることに驚いた。  でも、樹にはあんなに可愛い彼女がいた。辛いが、とてもお似合いだとヒナは思った。  彼女がいるのに、今もなお自分のことを愛していると樹は告げた。  樹が吐露した狂おしい想いと杏璃の存在。  彼の言葉に嘘はなかったと思う。  杏璃の存在が、鋭い棘のようにして深く心に突き刺さる。  けれど、例え彼女がいても、樹が杏璃を好きでも、それでも。  自分の気持ちは寸分も変わらないとヒナは思った。 「杏璃ちゃんのこと、樹くんに聞こう」  行動しなければ、何も動き出さない。解決しない。  ヒナは今まで通りぬるま湯に浸るような、樹の想いを犠牲にした関係を続けるつもりはもうなかった。  謝って、誤解だと説明して、そして、言おう。  ――――私、樹くんが好き。  その『好き』は、弟のように慈しんでいた淡いものから急速な変化を遂げた。  今までのような穏やかな親愛の情から、切なくて苦しいものに想いの色が変わってしまった。 「勇気ないけど……でも、ちゃんと言わなきゃ」  心に巣くう不安は拭えない。  でも、それでも。 「よし! 私、頑張る!」  バタバタと浴室から出たヒナの目には、強い輝きが宿って見えた。
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