Ⅶ ~交錯する想い~

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 トレーナーの上に淡いピンクのカーディガンを羽織り、膝までのデニムのスカートに着替えると、ヒナは濡れた髪をそのままに玄関へと向かう。 「お母さん、樹くんの所に行ってくる!」  電話をしていた母は、ヒナの声に慌てて振り返った。 「ヒナごめん、お母さん大阪呼ばれちゃった! すぐ新幹線乗って画廊に戻らなきゃダメなの!!」  急な仕事が入ったと、受話器を押さえながら口早にまくし立てる。 「お母さん、私は大丈夫だよ。いってきます」 「ちゃんと樹くんと話すのよ~!」  ヒナはニコリと微笑み、大きく頷く。  そして、すぐに非常階段へと向かった。
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