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「……ボクは太ってないよ。けど、なんでそのキテレツなダイエットを、敢えてカレーで試みようとするのかな」
もはやこれはカレーとはいえない。
カレーと呼ぶのはおこがましいとさえ思えるほど、センスの欠片もない残骸じみた盛りつけだった。
カレー味の肉に野菜。それに、このお椀に入ったカレールーは……まさか、飲めというのか。
……ありえない。
樹の肩がブルブルと震え出す。
そして、
「あっはははは! はは、信じられない! なんだその発想! ボクにはないよ、ある意味尊敬に値する!」
椅子に座ったまま身体をくの字に折り曲げて、お腹を抱えて笑ってしまう。
「そうでしょ! 私もテレビ見た時、そんなのでダイエットできるんだって感動したんだ」
ヒナは胸を反らせてテレビの内容がいかに凄かったかを説明してくるのだが。
樹の言葉を勘違いしたその姿までも面白すぎて、可愛くて。
年齢の割に幼い容姿に加えて、その思考。どこか欠けたこの少女が愛おしくて。
――――うん。やっぱりヒナは手離せないよね。
くすくすと肩を揺らせ、昏い光を宿した樹の眸は、無邪気に話すヒナの姿を捉え続けた。
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