Ⅶ ~交錯する想い~

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「ボクは、そんなバカで迂闊なヒナが嫌い」  唐突に、樹は断言した。  あれほどまでに好きだと告げていたその唇で、真逆の言葉を言い放つ。  ヒナに衝撃が走った。  じわじわとその言葉が身体を侵食してくる。  ――――嫌いって言った? 嫌い? 私のこと、もう、嫌い? 私、バカだから、もう、呆れちゃった?  イヤだ。  嫌われるのは、イヤ。  ――――お人形みたいに可愛らしい杏璃ちゃんのことが好きになったから、……もう私はいらなくなった?  ヒナは身体を小刻みに震わせながら呆然としてしまう。  イヤだイヤだと心は叫んでいる。  ぐちゃぐちゃに頭を掻き回されたみたいに、思考が纏まらなくなる。  動くことすらままならない。  ヒナの動揺をつぶさに観察するように、樹の静逸な双眸が自分を捉えていた。 「振り向いてくれないヒナなんて、もうやめる。ボクのことを好きって言う杏璃と付き合うことにしたから」  ――――杏璃ちゃんと付き合う? 「……そ、んな……」  ショックで目の前が昏くなるようだった。  バランスを失った身体がふらりとよろめく。  盤石だった足元が、波に攫われる砂のように覚束ないものへとすり変わる。  ふらふらと立ち上がり、この場から離れようと無意識に樹から距離を取る。  それを見た樹の顔が不機嫌に歪んだ。 「逃げるな。――――そこから一歩も動くな」  絶対的な命令。  ヒナは思わず動きを止めた。
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