Ⅶ ~交錯する想い~

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「そそそ、そういうのは、ははは、ハタチになってからッ!!」 「……それ、何の拷問? あと8年待てって? 却下だよ」  ヒナの必死な声にきっぱりと否を告げた樹は、彼女のトレーナーに手を忍び込ませようとする。  素肌を這う樹の手のひらの感触に、思いもしない急展開に、パニックに陥ったヒナは声を限りに叫んだ。 「や――――っ! ムリムリムリダメダメダメ、ぜぜぜ全部ハタチ……ハタチになってからだからぁ――――っ!!」 「……なにそれ。お酒のCM? ヒナがはたちになるまで待てってこと? んー、それも却下かな。いろんな意味で、もー限界」 「……ム、リだよぉっ、いつきく、スキだけど、できな……っ、ごめんなさ、ゆ、るして……も、かえる、かえりた、いぃっ」  完全に泣きが入ったヒナの声。  けれど、樹は容赦なかった。 「それこそムリだよ。だってもう、ヒナ動けないでしょ?――――ヒナ、飲んじゃったからね。ハルシオン入りの紅茶」  最後の言葉は絶対に聞こえないだろう小さな声で、樹は呟く。 「あ……」  ――――あれ……、聞こえない?  急速に霞(かす)み始めた意識の中、ヒナは疑問に思った。  自分の身体に、今、一体何が起こっているのかと。  耳に蓋をされたように、樹の声が突然聞こえなくなった。  焦点が合わなくなる視界で樹の姿を捉えようとするけれど、それすらひどく難しい。  重い瞼が今にも閉じてしまいそうになる。  戦慄く唇は、もう声を発することすら出来なくて。  弛緩する身体は、まるで鉛を詰め込まれたみたいに動くことすらままならない。  五感の全てが急激に黒く塗りつぶされてゆくようだった。  グッタリと動かなくなったヒナを見て、樹の身体がくくっと揺れた。
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