Ⅶ ~交錯する想い~

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「ごめんね、ヒナ。今すぐにヒナを手に入れておかないと、ボクの精神(こころ)がもちそうにないんだ。今回みたいに他の男に奪われるかもとか、本当にムリ、限界。……ボクはもう、ギリギリなんだよ」  樹の言葉を脳裏に留めることなく、ヒナは彼に抱かれたままコトリと頭を垂らした。          ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇  固く閉じたヒナの目尻から、たまった涙が頬を伝う。  薄く開いたヒナの唇に、樹は自分の唇をそっと重ねた。  ヒナは目覚めない。きっと明日の朝までは目覚めないだろう。  口付けながら、樹はふっと口角をつり上げた。  ……即効性の高い睡眠薬・ハルシオン。  飲んだ後の記憶が曖昧になってしまう強力なものだ。  机の戸棚に隠してある劇薬。樹はそれを先ほどの紅茶に混ぜた。  薬の味はブランデーで消し、誤魔化して。 「可愛いボクのヒナ。扉のない鳥籠に入れて、一生大切にしてあげる」  ――――だから。  腕の中でくたりと力を失ったヒナを、樹は軽々と抱き上げた。  意識を失い無防備に身を預ける彼女に、樹は喉の奥で嗤いを噛み殺す。 「ヒナをもらうよ」  子供とは思えない低く甘い音色で囁くと、樹は大切な宝物を扱うようにしてヒナをだき抱え、そのまま寝室へと姿を消した。
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