Ⅷ ~疑惑~

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「昨日、樹くんの家に行って……ちゃんと誤解だって説明して、確か樹くん、納得してくれたんだよね? で、その後、その後だよ……どうしたんだっけ?」  うんうん唸りながら考えてみるも、誤解を解いた後の記憶がぼんやりと霞んでいて思い出すことが出来ない。記憶の引き出しを手当たり次第に開けまくってみても、欲しい情報を掴み取ることが出来なくて。  すると、シーツを手繰り寄せる衣擦れの音がして、ハッと振り返った。 「ちゃんと納得したよ? 類って男のこと。あれは誤解だって」  いつの間に目を覚ましたのか、樹が俯せのまま両手に顔を乗せて、にっこりとこちらを見つめていた。 「あっ! 樹くん!? なななんで、なんで私、さっき服……服、着てなかったのかな!?」  トマトみたいに赤に染まった困惑顔で、ヒナは口籠もりながらも疑問の答えを知るだろう樹に質問を投げた。 「え、覚えてないの? 自分で脱いだんじゃない、ヒナ」 「……は?」   さらりと言われたセリフに、ヒナは動揺も羞恥も吹っ飛んで、きょとんとしてしまう。 「ごめんね、ヒナがあんなにアルコール弱いなんて知らなかったんだ。落ち着くようにって、ほんの少しだけ紅茶にブランデー入れてたんだよ。そうしたら、ヒナ、酔っ払っちゃって。眠いって言うから寝室に連れてったら、今度は急に暑いーとか言い出してさ。鼻歌交じりに脱ぎだしたんだよ。いきなりだったから、ボク……びっくりしちゃった」  頬をピンクに染めながら、なぜか満足げに告げられて、ヒナは度肝を抜かれて卒倒しかけた。
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