Ⅷ ~疑惑~

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 ふらりと蹌踉(よろ)めいた身体が背後の壁にガンッと当たる。 「う、う、うそうそ、絶対うそだ―――ッ!」  きゃ―――ッ! と絶叫を上げながら、壁を背にズルズルとしゃがみ込む。  ――――ああ、もう真面目に気を失ってしまいたい。  ヒナは真剣にそう思った。 「ごめんね? ホントなんだ」 「そんなそんな……鼻歌交じりでいきなり裸になったって……ご、ご、ごめんなさいッ」  ガクリと頽れたヒナは、ガバッと頭を下げて謝った。  こともあろうに樹の前で、酒乱のような醜態を演じてしまったのだと、ヒナはこのまま死んでしまいたくなるほどに恥ずかしくて。  樹はヒナを気遣って紅茶にブランデーを入れただけなのに、まさか突然ストリップショーが始まってしまうなんて思ってもみなかったに違いない。  可哀想に、樹は酔っ払ったヒナの犠牲者になってしまったのだ。  ごめんなさいごめんなさいっ! と、まるで読経みたいに謝り倒すヒナの様子に、樹は我慢できないとばかりに吹き出した。 「ははっ、くくっ。別に謝らなくてもいいよ。だって、ヒナはもうボクの彼女だし? ハダカくらい別に恥ずかしがらなくてもいいんじゃないかな。ねえ?」 「え?」  降ってきた言葉に、ヒナはまたもキョトンとなる。 「……なに? その、今初めて聞きました的な顔」  ヒナの『彼女って誰のこと?』という疑問顔を見た樹は、一気に気色ばむ。 「……ヒナはボクの『彼女』でしょ?」 「あ、あ……、はぃ」  じりじりと迫ってくる無言の威圧に、ヒナはおずおずと返事を返し、ゴクリと喉を鳴らした。
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