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ふらりと蹌踉(よろ)めいた身体が背後の壁にガンッと当たる。
「う、う、うそうそ、絶対うそだ―――ッ!」
きゃ―――ッ! と絶叫を上げながら、壁を背にズルズルとしゃがみ込む。
――――ああ、もう真面目に気を失ってしまいたい。
ヒナは真剣にそう思った。
「ごめんね? ホントなんだ」
「そんなそんな……鼻歌交じりでいきなり裸になったって……ご、ご、ごめんなさいッ」
ガクリと頽れたヒナは、ガバッと頭を下げて謝った。
こともあろうに樹の前で、酒乱のような醜態を演じてしまったのだと、ヒナはこのまま死んでしまいたくなるほどに恥ずかしくて。
樹はヒナを気遣って紅茶にブランデーを入れただけなのに、まさか突然ストリップショーが始まってしまうなんて思ってもみなかったに違いない。
可哀想に、樹は酔っ払ったヒナの犠牲者になってしまったのだ。
ごめんなさいごめんなさいっ! と、まるで読経みたいに謝り倒すヒナの様子に、樹は我慢できないとばかりに吹き出した。
「ははっ、くくっ。別に謝らなくてもいいよ。だって、ヒナはもうボクの彼女だし? ハダカくらい別に恥ずかしがらなくてもいいんじゃないかな。ねえ?」
「え?」
降ってきた言葉に、ヒナはまたもキョトンとなる。
「……なに? その、今初めて聞きました的な顔」
ヒナの『彼女って誰のこと?』という疑問顔を見た樹は、一気に気色ばむ。
「……ヒナはボクの『彼女』でしょ?」
「あ、あ……、はぃ」
じりじりと迫ってくる無言の威圧に、ヒナはおずおずと返事を返し、ゴクリと喉を鳴らした。
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