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下から持ち上げるように唇を押し当てて、樹はヒナの唇を啄むように奪う。
「ふふ、おはようのちゅうー」
「へ、」
逃げるヒナの身体を壁際に追い詰め、肩に置いた手を彼女の後頭部へと回す。さらに深くなるように、樹はまたヒナの唇を食んだ。
んーっと両手で突っ張りながら樹の顔をどかそうとしてみるけれど、濡れたリップ音をたてながら啄(ついば)まれる口付けに、だんだん力が抜けてきてしまって。
……息が出来ない。酸素が足りなくて苦しくなってくる。
羞恥に染まったヒナの顔は、だんだん苦しげに蒼くなる。
顔をずらせて息を吸おうとするも、樹に頭を固定されてしまい全く動かせなくて、さらに酸欠がひどくなるばかり。
「鼻で息するんだよ、ヒナ」
くつくつ嗤う振動が口内に響く。樹の声に、ヒナは酸欠でぼうっとする頭で、ああ、そうなんだよく知ってるなぁと、ぼんやり納得した。
「じゃ、もっかい、ちゅー」
樹はひどく色っぽい眼差しと声で、今度は深く、大人な口付けを仕掛けてきた。
「……あっ、ぅ」
歯列を割り、上蓋を樹の舌先が触れた時、背筋に怖気に似た何かが走った。
背がピンと反って細かに震える。
――――き、きゃ――っ! なな、なんか入ってきたっ! ベベ、 ベロが……っ!?
涙の混じる瞼を開けたら、意地の悪い樹の視線とぶつかった。
面白いおもちゃを見つけたと言う顔。
ひぃっとヒナの双眸に怯えが走る。
けれど、樹の容赦ない攻めは止まらなくて。ガクガクと膝が砕けそうになる。
壁と樹に挟まれて、朦朧と意識を飛ばしかけた時、
「……ね、ヒナ。シたいな。いい?」
ひどく掠れた声で、樹は熱っぽい潤んだ目を向けてきた。
「ヒナとしたい。ダメ?」
切なく濡れた、とても蟲惑的で色めいた双眸。
色っぽすぎてムリッ! と、ヒナはぎゅっと目をつむり喘ぐように叫んだ。
「……し、してる! ちゅ、ちゅうしてる……っ」
ヒナが放った回答は、樹が質問した内容とは全く違う答えだった。
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