Ⅷ ~疑惑~

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 高層階用のエレベーターを降り、一階エントランスへ着く。  ヒナは3階なので、低層階用のエレベーターに乗り変えないといけないのだが、いつものクセで二人は非常階段へと向かった。  歩きながら、ヒナは落ちつきなく視線を自分の腰へ落とす。  ――――樹くん、なんで掴んでるのかな……?  ヒナは困り顔で首をひねる。  ヒナの腰、スカートのベルト部分を樹がガッシリと掴んでいたのだ。  これではまるで、警察に連行される犯人のようだ。  訳がわからないと、ヒナはこっそり溜息をこぼした。  ちらりと樹をうかがったら、これ以上ないくらい上機嫌に微笑まれる。  ヒナはおや? と違和感を感じた。  ――――なんだろう。なにかがおかしい……?  何かが引っかかっる。ふに落ちない。  それはまるで、同じ大きさと断片の、二種類の異なるパズルを同時に組み立てているような、そんなしっくりこないもやもやとした気分がヒナの顔を暗くする。  しっくりこない原因は何だろうと考えた時、ヒナの頭に疑問の数々が浮かび上がってきた。  まず、今は非常階段を上っているのだが、ちゃんと歩けない。  歩く度に、下腹部からズキンとした鈍い痛みがヒナを襲う。  この痛みはなんだろう。  気を遣いながら歩いていたため、速度は普段より明らかに遅いはず。けれど、樹は何も指摘してこないのは何故だろう。いつもなら「遅いっ。グズグズすんな」くらい言ってきそうなものなのに。  それに、下肢に感じる不可解な感覚も気になる。  ヒナは自分の左手首に目を向けた。  柔らかい皮膚に浮いた赤い痣。  また身体中にじんましんが出来てしまった。けれど、なぜじんましんなのに痒みがないんだろう。  ヒナに出来たじんましんに関して、やけに純人と類が反応していたことを思い出す。
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