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ヒナはじんましんを疑っていなかったが、病院へ行こうとしたヒナを以前同様頑ななほどに樹は引き留めた。
病院へ行くことを止めたのは何故だろう。
類と純人はヒナのじんましんを見て、これはキスマークだとしきりに言っていたことを思い出す。
――――キスマークなんて。
そう考えて、あり得ないと思わず吹き出してしまう。
マンガなどではベッドシーンがあった際の描写によく使用される、キスマーク。ヒナ的にはかなりアダルトで未知なる代物だ。
もちろん実物など見たことない。
だから、純人や類のようにはっきりと断定出来ないでいた。
けれど、これが彼らが言うように『キスマーク』だと仮定したら、痒みがないのも頷ける。
自分の身体に起こる異常を、ヒナは改めてひとつひとつ並べてみた。
身体に散らばる尋常ではない赤い発疹。
下腹部に感じる不可解な鈍痛。
足の付け根に何かが挟まっているような不快な違和感。
そして、抜け落ちた昨夜の記憶――――。
瞬間、ヒナに浮かんだ笑みが凍り付いた。
散らばった点が線で繋がったような、謎が解けたような、そんなすっきりとした感じさえする。
全ての辻褄が合うのだ。
総合的に、これらの事例から導き出される答え。
それは、一つしかない気がした。
――――それは、つまり。
「ひ、ひぃ――――っ」
「うっわ! いきなりなに!?」
ヒナの百面相を隣で楽しそうに見つめていた樹だったが、隣であがった突然の奇声にビクッとなる。
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