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「……このガキッ」
怒りのまま振り上げた純人の拳が樹を狙う。
咄嗟に後ろに身を引き、樹は彼の重い拳をすでの所で避けた。そして、そのまま後方へと下がる。
「……ごめんね? ボクも守りたいものがあるから。それを手に入れるために、手段を選んでられなかったんだ」
「守りたいもの? それはヒナか。……そうはさせない。お前みたいな悪魔に、ヒナはやらない」
すっと樹の双眸が険しく眇められる。
樹からふつりと余裕が消えた。
「……ヒナを自分のものみたく言うのはやめろ。……不愉快だ」
「はっ。顔色が変わったな。ヒナに全て話してやるよ。貴様は凜の過去を利用して自分の手駒にした、狡猾で卑劣、人の心を無くした悪魔だってな」
凍えるほどに冷たい眸で、純人は樹を睥睨しながら報復の言葉を吐いた。
彼のセリフに、樹の唇が凶悪に吊り上がる。
「ふふっ。いいのかな。そんなことしたら、大好きな『凜』を『また』守れなくなるよ?」
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