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大金を払えば、事実など容易にねつ造出来る。社会的に彼女を抹殺することくらいあっけないほどに簡単で、樹にはそれが可能だった。
黒い微笑を浮かべたまま、樹は続けた。
「口を噤(つぐ)め。ヒナには何も言うな。ボクが言いたいのはそれだけ」
樹は手にした写真を、純人の目の前でビリビリと破く。
「これはコピー。データはボクが持ってる。ボクの言う通りにしてくれないと、彼女を社会的に抹殺してあげる。それがボクには出来るって事、忘れないでね」
容赦ない樹のセリフに純人は息を呑んだ。
樹は写真の欠片をパラリと手放す。
彼の手から放れた残骸は、ヒラヒラと風に舞い、草葉の上に転がり落ちた。
――――チェックメイト。
樹がほくそ笑んだ、その時だった。
ガサガサと草が動く気配がして、樹は少しだけ目線を動かす。
刹那、ハッと息が止まった。
こちらへ向かって歩いてくるヒナの姿が見えたのだ。
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