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「ふざけんな……ふざけんなよ、クソガキが! せっかく凜の過去を……記憶を封印してたのに……お前のせいで全部めちゃくちゃだ。許せねえ……っ!」
純人が放った怨嗟の声に、ヒナに向いていた樹の意識がスッと戻る。
「はあ? 過去の記憶を封印? なにそれ、アンタまさか……飯島センセの記憶をいじったのか?」
瞬間、純人がグッと詰まった。
樹は目を見開く。
「あははっ! 信じらんない、それってマインドコントロール!? 面白いコトするね、アンタ」
お腹を抱えて楽しげに嗤う樹を、純人は何も言えずに燃えるような激しい目で睨む。
「アンタにとってそんなに大切なオンナなんだ、飯島センセって。だったら、――――わかってるよね?」
笑いを止めた樹は、声を潜め、再度確認する。
答えなど聞くまでもなく分かっていた。
けれど、自分には逆らえないということを、はっきりと認識させる必要があった。
「……クソガキがっ!」
悔しげに吠える慟哭の声。
ふっと樹の唇が勝利に綻ぶ。
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