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「……お前は本物の悪魔だよ」
荒ぶる感情を誤魔化すように、手のひらを硬く握ったり開いたりしながら、純人は殺しきれない怒りに歪んだ顔でぼそりと呟く。
「うん。よく言われる」
樹は、ニコリと人に可愛らしいと評される笑みを浮かべる。
温度のない人形じみた微笑を浮かべる少年に、純人は無言で拳を振り上げた。
また避けるだろうと純人は思った。分かっていて拳を振り上げた。
いっそこのままくびり殺してしまおうかと真剣に考えてしまうほど、冷たい微笑を浮かべる目の前の少年が憎らしかった。
けれど、純人の拳を避けるだろうと思った樹は、ニッと笑んだまま動かない。
何かがおかしいと感じた時には、純人の拳は勢いのまま樹の頬を抉っていた。
弧を描きながら樹の身体が後方へと吹き飛ばされる。
樹の身体がザザザッと草の上を転がる音と、潰れた草の青い匂いが辺りにもわっと立ち篭めた。
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