Ⅱ ~近所のお姉さん~

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 ヒナはあっと声を上げた。そのクイズ番組はちゃんと録画して、CDにも焼いて、大切に保管してある。  ヒナの一番の宝物。永久保存版だ。  樹がクイズ番組に出場したのは、今から2年前のこと。  それは対決型のクイズ番組で、ヒナが毎週楽しみに見ている番組だった。  たまたま一緒に見ていた樹が、『こんな番組が好きなの?』と呆れ顔で聞いてきたので、ヒナは『スゴく好き!』と、大きく頷いた。  そうしたら、樹が『じゃあボク、コレに出てみよっかなぁ。優勝したら、ボクとデートしてくれる?』などと言い出した。  ヒナは画面を食い入るように見つめたまま、適当に『いいよー』と返事をしたのだが。  日本屈指の財閥系企業・鷹城コンツェルンCEOである父親のコネを使い、樹は番組史上初の最年少回答者として、出場の権利をもぎ取った。(後日談として、鷹城コンツェルンは、番組のスポンサーだったらしい)  そうして番組収録当日、樹に誘われヒナも一緒にテレビ局へ訪れたのだが、その時、二人は聞いてしまった。  他の回答者を含めた大人達が、これ見よがしに『ここはガキの遊び場じゃない』『親のコネで出場した目立ちたがり』『ガキが出場なんて番組の品位を疑われる』などと揶揄してきたのだ。  驚いたヒナは、樹の手を引き、逃げるようにその場から離れた。  けれど、ヒナの心配をよそに、樹は動じることはなく不敵に笑い、 『見てろ、ヒナ。必ずボクが優勝してやる』  心細さで不安に苛まれていたヒナに向け、スタジオにいる誰よりも自信に満ちあふれた顔で、そう宣言したのだ。
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