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キャ――――ッと悲鳴を上げそうになった。
安心出来る要素が一つもない。むしろ、不安しか湧いてこない。
ヒナは狼狽した。
樹の言葉が意味することを真剣に考えた。
眉間に深い皺を刻んで、唇をへの字に歪ませて、懊悩の体(てい)で樹を凝視した。
「あれ、どうしたの。ヒナ、ヘンな顔」
ふふふっと妖艶に笑み崩れる樹の唇に視線が釘付けになる。
「……なに、なに……、なにいってんの。おかしいおかしい。樹くんらしくない変な内容の言葉だよ。私がお酒入りの紅茶を飲んで酔っ払っちゃったあの日……何か……何かあったの!?」
この煩悶の原因となる答えが見つからず、いや、見つからないのではなく、認めたくないが正しいかもしれない。
頭の中がパンク寸前で、呼吸が浅く速くなる。
鼓動も煩いくらいに激しく胸を打つ。
いっそこのまま全力疾走で逃走して現実逃避してやろうかと真剣に悩むほどの恐慌に苛まれ、だんだん頭がもたげて下へ下へと落ちてしまう。
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