終章 ~悪魔の洗脳?~*おまけイラストつき

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 後退るたびに靴が砂利を踏みつけ、不安を煽るように低い音を鳴らす。 「何もナイナイ。ホラ、ボクってまだ純真無垢な12歳だろ? キスで子供が出来ちゃうとか、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるとか、そんな話を信じるくらいに穢れないから。こんなカワイイ勘違いくらいみんなするよね。ふふっ、ボクとしたことが勘違いしちゃったよ」  可愛らしいと賞賛される極上の笑み顔で、樹は小さく口を動かした。 「……それにしても、忌々しい。あの男だけは、もう一度きっちりシメとかないとダメだね」  ヒナには聞こえないくらい細い声で、樹は何事かを呟く。  ニコニコと無垢な笑みを崩さないまま、樹は拳に握った間接をバキバキ鳴らす。  「なんか怖っ」と、ヒナは樹からさらに距離を取った。  胡乱な目で樹を見据えながら、ヒナは思う。  ――――……あり得ない。樹くんがキスで子供が出来るとか、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるとか、そんなこと真剣に思ってるとか考えられない。    彼は疑問に思ったことは絶対に調べまくるはずだから。  資料やらネットやらヒナの知らない秘密の裏情報屋? やらを駆使して正解を導き出すはず。  なので、さっきのセリフは絶対ごまかしだとヒナは確信する。  ジリジリと逃げを打つヒナに、樹の顔がピキッと引き攣った。
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