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「こ、こっち来ないでっ! い、樹くん、おかしいっ! ちゃんと答えてっ、私になに、」
「……ヒナァ、ボクは知らないっていってんの。ボクがウソ吐いたって思ってるんだぁ? 心外だなー。じゃあなに? ヒナはボクが何をしたって思ってるワケ?」
畳みかけるようにしてヒナの言葉を遮り、樹は眉根を寄せた不機嫌面で質問を返す。
「え」
「ボクはただ、ヒナが酸っぱいモノが欲しいって言うから、もしかしてって勘違いしただけなのに。じゃあ何? ボクがヒナに何したって言うの? 事細かに説明してくれないかな? ボク、よくわからないなー」
居丈高に腕を組み、「オラさっさと答えやがれ」といわんばかりの顔で睥睨してくる樹に、ヒナは言葉に詰まった。
「黙ってないで答えろ。ボクがヒナにナニしたって?」
――――い、言えるわけない……!
顔から鎖骨にかけて一気に朱を刷き、ヒナの肩がぷるぷると小刻みに震え出す。
羞恥に震えるヒナを、樹は濡れた双眸をすっと細めながら満足げに眺めている。
乾いた唇を舐め取る仕草もひどく艶めかしくて。
恥ずかしくて見ていられないとばかりに、ヒナはさらに紅潮した顔を樹からむりやり引き剥がした。
「ほら、黙ってないで言えよ」
「い、樹くんはイジワルだ……っ」
ぎくしゃくと大きく頭をひとつ振って、「答えられない」と訴えるのだが。
「ボクの言葉を信じてくれないヒナが悪い」
ヒナの訴えは、無情にもばっさりと樹に切り捨てられる。
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