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学校が終わり、少し美術室へ寄った後、ヒナはひとり学校の門を出た。
降り注ぐ夕日の淡いオレンジ色が、校門にもたれ掛かる小柄な影を映している。
ヒナはハッと目を見開いた。小柄な影は、初等部の制服を着た樹の姿だった。
「あれ? なんで、樹くんここにいるの?」
「お礼言いたくて待ってた。絵を描くの教えてくれるんでしょ? 引き受けてくれてありがと。嬉しくて迎えに来たんだよ」
ヒナの驚いた声に、にこっと笑って樹は答える。
「もしかして、ずっとここで待っててくれたの!? ごめんね、美術室寄ってたから遅くなっちゃった!」
ごめんねごめんねと繰り返すヒナに、樹は苦笑を漏らした。
「一緒に帰りたくて待ってただけだから、そんなに謝らないで。それより、ヒナのお母さん今日も出張なんだろ?」
樹の問いに、ヒナはコクリと頷く。
「だったらさ、昔みたいに今日はヒナんちに泊まっていい?」
「うん、いいよ。ひとりは寂しいから、嬉しい」
不安げな樹に、ヒナは躊躇なくニコニコと即答する。
樹はきょとんとヒナを見上げた。
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