Ⅱ ~近所のお姉さん~

14/25

2643人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
 学校が終わり、少し美術室へ寄った後、ヒナはひとり学校の門を出た。  降り注ぐ夕日の淡いオレンジ色が、校門にもたれ掛かる小柄な影を映している。  ヒナはハッと目を見開いた。小柄な影は、初等部の制服を着た樹の姿だった。 「あれ? なんで、樹くんここにいるの?」 「お礼言いたくて待ってた。絵を描くの教えてくれるんでしょ? 引き受けてくれてありがと。嬉しくて迎えに来たんだよ」  ヒナの驚いた声に、にこっと笑って樹は答える。 「もしかして、ずっとここで待っててくれたの!? ごめんね、美術室寄ってたから遅くなっちゃった!」  ごめんねごめんねと繰り返すヒナに、樹は苦笑を漏らした。 「一緒に帰りたくて待ってただけだから、そんなに謝らないで。それより、ヒナのお母さん今日も出張なんだろ?」  樹の問いに、ヒナはコクリと頷く。 「だったらさ、昔みたいに今日はヒナんちに泊まっていい?」 「うん、いいよ。ひとりは寂しいから、嬉しい」  不安げな樹に、ヒナは躊躇なくニコニコと即答する。  樹はきょとんとヒナを見上げた。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2643人が本棚に入れています
本棚に追加