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「え? 即答? 泊まってもいいの? ってか、ヒナってホント警戒心が皆無だねえ。……それってボクが相手だから?」
目を見開いた樹は、ヒナを捉えながら次第に顔を曇らせてゆく。
「もしかして、ボクって男と思われてない? ……うわ、腹立つ」
聞こえないほどに小さな声でぶつぶつ呟きながら、樹は忌々しげに顔を顰めた。
「なんで怖い顔してんのかな?」と、ヒナはビクビクと樹の顔色を窺ってしまう。
その時、ふとヒナは気が付いた。
――――あれ? 樹くん、背が伸びた?
交わる視線が、だんだん近くなってきている。
昔はもっと小さくて可愛らしさが前面に出ていた。
でも、今は。
ぷっくりしていた頬も、顎も、スッと細くなって、眸も以前より鋭さが増したというか大人びたというか。
髪の毛もふわふわだったのに、なんだか硬くなったような気もする。
男の子の成長は早いな。そんなふうに感じて、ヒナは少し戸惑いを覚えた。
「……樹くん、おっきくなったねえ」
「あ? なにしみじみオバチャンみたいなセリフ言ってんの? 子供扱いすんな。背なんてヒナとそんな変わんないじゃない。見てろ、ヒナなんてすぐに追い超してやる。そうしたら」
樹はそこで言葉を句切り、ニッと意味ありげな顔で嗤う。
まるで獲物を狙う猛禽類みたいな眸でじっと見つめられて、ヒナはギクリと身体を強ばらせる。
まだ幼いと思っていたのに、日に日に大人へと近付く樹はヒナを激しく動揺させてしまう。
「な、な、なんでそんな顔で私を見るの?」
「ふふっ。……なんでだと思う?」
二人の距離はそのままなのに、逃げられないような、追い詰められたような、そんな心地になる。
「うぅ、なんか怖いから、聞くの止めておく」
喉の奥から絞るようにして、ヒナはもごもごと口の中で呟く。
「ふふっ。今はまだ、その方がいいかもね」
樹の緩んだ口元には、二心を抱く悪者じみた笑みが浮かんでいた。
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