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「弟? ボクが? アンタの方がよっぽどガキっぽいよね」
「えー樹くんの方がずっとガキっぽくてカワイーよ」
「……それ、褒めてんの貶してんの、どっち」
樹のムッとした顔に、ヒナはニコッと笑う。
「ホメことばだよー! わかんない?」
手負いの獣に似た鋭い威嚇の眼差しさえ可愛らしくて。
唇に綺麗な弧を描きながら、ヒナは樹の頭をよしよしと撫でた。
「……ボクはアンタがわかんない」
撫で繰り回されてクシャクシャになる柔らかな茶色の髪を、ヒナはニコニコと頬を緩めまくって遠慮なく触っている。
樹は鬱陶しげに顔を歪めた。
けれど、その手を振り払うことはせず大人しくされるがまま。
唇だけは不機嫌そうな『への字』だったが、裏腹な心情を表すように、樹の目尻は紅く染まり、双眸はヒナの手の感触を楽しむようにとろんとしている。
先ほどまであった警戒の色はすでになく、彼の顔には純粋な興味と好奇心が浮かんでみえた。
「ふうん。アンタは面白そうだね、ヒナ。……退屈、しなくて済むかな」
小さな声で独りごちる。
そして、樹はヒナを下から覗き込み、
「仲良くしてね。オネエチャン?」
挑発的に、にたりと嗤った。
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