Ⅱ ~近所のお姉さん~

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「……アイツ、あの美術教師。邪魔だね」  ヒナに、いや、――――ヒナが。  あの男にすり寄るように、甘えるようにしていた。  樹の目にはそんなふうに映った。  それが耐えがたいほどに忌々しい。  いっそ、ヒナに殺意を覚えるほどだった。  早急に排除しなければ。  その策は、樹の中でもうすでに考えてある。  新しく樹のクラスに赴任してきた女教師。  あの女に贄(にえ)になってもらうつもりだった。  樹はニヤリとほくそ笑む。  ヒナが興味を持つ全てのものが、樹にとっては不快だった。  だから、不快に感じるモノは目の前から速やかに排除してやると決めた。 「ねえヒナ、誰も好きにならないで」  彼女の耳に樹の言葉は届いていない。だから、秘めた想いが素直に口から溢れ出す。 「……可愛いヒナ。ボクのヒナ」  ぷっくりとしたヒナの唇に、指先を伸ばしてそっと触れてみる。  ――――ここに、触れたい。  今は集中しているから、絶対に気付かれない。  そう思ったら、理性など一瞬で消し滓(かす)のように吹き飛んでしまった。  本能が命じるままヒナに顔を寄せた時、彼女の肩がぴくんと揺れた。 「――――出来た!!」  ヒナの瞳に浮かぶのは、歓喜。  樹の瞳に浮かぶのは、落胆。  樹はがっくりと肩を落とした。
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