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「ふんぎゃあああ!」
――――ムリムリムリッ!
ヒナは両手で顔を隠し、浴室の端っこで蹲(うずくま)る。
「ねえ。なんでそんなにビビってんの? 昔はよく一緒に入ったのに」
樹が意地悪く笑いながら、残されたキャミソールとパンツをはぎ取ろとぐいぐい引っ張ってくる。
ヒナの心情を表すように、彼女の顔色が赤から青に変わり、土気色になる。
「いいじゃんハダカ見られたって。将来、ヒナはボクの嫁になるんだから」
「ひぃやああ、ならないならない! 弟の嫁にはならない――ッ」
絶叫に近い声で、ヒナはぶんぶん頭を振って拒絶する。
「コイツ。また弟言いやがったな……犯すぞコノヤロ」
凄まじい怒気を孕んだ低い声が耳元に落とされる。
ヒナはビクッと竦み上がり、完全に恐慌状態に陥ってしまった。
「……ボクはヒナの弟じゃない。ボクを『弟』なんて言うな。これ以上近付くな、自分の中に入ってくんなって、境界線引かれたみたいで腹立つ」
樹はチッと鋭い舌打ちを鳴らした。
「――――ボクとヒナを隔てる境界線なんて、ぶっ壊してやる」
殺意にも似た激しい眼差しで見下ろされ、ヒナは震え上がった。
膝を抱えたままふるふる震えるヒナを冷然と見下ろしながら、樹はシャワーのコックをキュッと捻る。
そして、しゃがみ込むヒナの頭から冷水を浴びせ掛けた。
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