Ⅱ ~近所のお姉さん~

23/25

2643人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
「ふんぎゃあああ!」  ――――ムリムリムリッ!  ヒナは両手で顔を隠し、浴室の端っこで蹲(うずくま)る。 「ねえ。なんでそんなにビビってんの? 昔はよく一緒に入ったのに」  樹が意地悪く笑いながら、残されたキャミソールとパンツをはぎ取ろとぐいぐい引っ張ってくる。  ヒナの心情を表すように、彼女の顔色が赤から青に変わり、土気色になる。 「いいじゃんハダカ見られたって。将来、ヒナはボクの嫁になるんだから」 「ひぃやああ、ならないならない! 弟の嫁にはならない――ッ」  絶叫に近い声で、ヒナはぶんぶん頭を振って拒絶する。 「コイツ。また弟言いやがったな……犯すぞコノヤロ」  凄まじい怒気を孕んだ低い声が耳元に落とされる。  ヒナはビクッと竦み上がり、完全に恐慌状態に陥ってしまった。 「……ボクはヒナの弟じゃない。ボクを『弟』なんて言うな。これ以上近付くな、自分の中に入ってくんなって、境界線引かれたみたいで腹立つ」  樹はチッと鋭い舌打ちを鳴らした。 「――――ボクとヒナを隔てる境界線なんて、ぶっ壊してやる」  殺意にも似た激しい眼差しで見下ろされ、ヒナは震え上がった。  膝を抱えたままふるふる震えるヒナを冷然と見下ろしながら、樹はシャワーのコックをキュッと捻る。  そして、しゃがみ込むヒナの頭から冷水を浴びせ掛けた。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2643人が本棚に入れています
本棚に追加