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「きゃあッ、冷たッ、」
冷たい水を掛けられて、きゅうっとヒナは竦み上がった。
「弟なんて言った罰。ホラ、早く脱がないと風邪引くよ?」
「うぅ、も、イジワルイジワルッ、家庭教師、も、やめるっ! 樹くんなんてキラ、」
グズグズとした泣き声で、ヒドいことをする樹にヒナは怒りをぶつける。
けれど、樹はすかさず「否」と言葉を重ねた。
「却下! ……話にならない」
鋭い声に、ヒナはハッと顔を上げた。
「……ねえ、ヒナ。ボクに逆らわない方がいいよ。キライなんて言葉いったが最後、ボク、どうなるかわかんないから。――――ねえ?」
くつくつ嗤う声に、ヒナは恐怖を覚えてしまう。
この子は絶対12歳なんかじゃない。
ヒナよりもずっと大人で狡猾で老獪な――――とても怖い存在だ。
ヒナはふるふる小刻みに震えながら、ポロポロ涙を流して樹を仰ぎ見た。
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