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「あり得ないってなに? ボクはずっとヒナをオンナとして見てるよ。出逢った時から、ずっと。ずっとだ。その感情もあり得ないって否定する気?」
仄暗い怒りが灯った樹の眸は、鈍色(にびいろ)の光を放ってヒナを射る。
ヒナはベッドの上でビクリと身体を強張らせた。
樹の中に、子供ではあり得ない「男」を感じて恐ろしかった。
――――樹くん、なんか、怖い……。
ヒナの瞳が恐れで揺れる。
自分をひたむきに見つめてくる樹の眸に縛られるような心地がした。
「その目。今、ボクのこと怖いって思ってるね? なんで怖いと思うのか、そんなこともわからないの?」
くつくつと、樹は喉を震わせるように低く嗤う。
「樹くんにはわかるの?」
「当たり前じゃない。わかんないヒナが鈍感すぎるんだ」
突き放すように樹は言う。
シーツを握りしめるヒナの手に力がこもった。
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