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「なんで? ……教えて欲しい」
「ヒナはね。本能で感じ取ったんだよ。ボクがヒナにとって危険な存在だって」
――――危険? 樹くんに危険を感じる?
意味が分からず、ヒナの両眼がきょとんと見開かれる。
「ボクが9歳の時だったよ」
「え?」
いきなりの話題転換に、ヒナは目を瞠った。
「――――精通。夢精っていうの? ヒナと交わる夢を見て、ボクは初めて逐情したんだ」
ヒナは今聞いた言葉を反芻してみる。
すぐに理解が出来なかった。
頭が理解することを拒否したのかも知れない。
ヒナは疑問符を頭に散らしながら、呆然と樹を見上げた。
「……無防備な顔。あんなに警告していたのに。ヒナはホントにおバカだね」
危機感薄く自分を見つめてくるヒナを捉えて、興奮したように樹の眸の光彩が色を増してゆく。
「意味、わかってないの? 困ったなあ。ヒナはどこまでお子様なんだ」
樹が椅子から立ち上がり、ゆっくりと近付いてくる。
シーツで隠れる太ももを跨ぐようにしてベッドへ乗り上げてきた彼に、ヒナはヒュッと息を呑む。
ベッドが軋む小さな音が、不安を煽る。
上から覆い被さるようにして樹の顔が近付いてくる。
固まるヒナの耳元に唇を寄せて、樹は蕩けるような甘い声で囁いた。
「ボクはヒナを見て欲情する。それをヒナの中のオンナの部分が感じ取って怖がってる。だからヒナはボクが怖いって感じたんだよ」
くつくつと嗤う振動が耳朶を震わせ、ヒナの全身に戦慄に似た何かが走った。
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