2643人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
「……ヒナ、ボクはね、もう『男』なんだ。ヒナを孕ませることだって出来る」
ヒナの頬に、樹は甘えるようにして自分の頬を擦りつけた。そして、クスクス嗤いながらヒナに毒を吐く。
「うそっ! はは、はらませるって、あ、赤ちゃん!?」
頭がパンクしそうな事態に、ヒナは樹からなんとか離れようとジリジリ後退する。――――だけれども。
「正解」
両手を包み込むように掴まれて、逃げられなくなる。
「こ、怖いよッ、ひぃっ」
硬直したヒナの身体が今の状況を拒絶する。
身を縮ませて樹の手から逃れようと抵抗する。
そんなヒナを見て、樹はさも楽しいとばかりに笑み崩れる。
「ふふっ。そんなにビビんないで。しないよ、まだ。……多分」
『多分』なんてあやふやな言葉に恐怖を感じて、じわりとヒナの眸に水の膜が張りだす。
樹を映す視界がグニャリとぼやけた。
「ヒナ、ボクのこと、ちゃんと『男』として見て。……好きになって?」
「す、好きだよ、でも」
口付ける寸前のような至近距離。
樹の眸の中に怯える自分の姿を見て、ヒナは言葉を詰まらせた。
「でも、はキライ。ボクをヒナの『初めての男』にして?」
「そ、そんな」
樹の言葉を否定するように、無意識に頭が左右に揺れる。
目尻に溜まった涙が揺れるたびに滴となって頬に散った。
――――そんなのはムリ。
そう紡ごうとしたヒナの唇を、樹は自分の唇でむりやり塞いだ。
ヒナは瞠目し、ぴたりと動きを止めた。
信じられないものを見るような、そんな眼差しで樹を捉える。
樹は大人しくなったヒナを解放し、濡れた唇をペロリと舐め上げた。
最初のコメントを投稿しよう!