Ⅲ ~天使な悪魔~

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「……ヒナ、ボクはね、もう『男』なんだ。ヒナを孕ませることだって出来る」  ヒナの頬に、樹は甘えるようにして自分の頬を擦りつけた。そして、クスクス嗤いながらヒナに毒を吐く。 「うそっ! はは、はらませるって、あ、赤ちゃん!?」  頭がパンクしそうな事態に、ヒナは樹からなんとか離れようとジリジリ後退する。――――だけれども。 「正解」  両手を包み込むように掴まれて、逃げられなくなる。 「こ、怖いよッ、ひぃっ」  硬直したヒナの身体が今の状況を拒絶する。  身を縮ませて樹の手から逃れようと抵抗する。  そんなヒナを見て、樹はさも楽しいとばかりに笑み崩れる。 「ふふっ。そんなにビビんないで。しないよ、まだ。……多分」  『多分』なんてあやふやな言葉に恐怖を感じて、じわりとヒナの眸に水の膜が張りだす。  樹を映す視界がグニャリとぼやけた。 「ヒナ、ボクのこと、ちゃんと『男』として見て。……好きになって?」 「す、好きだよ、でも」  口付ける寸前のような至近距離。  樹の眸の中に怯える自分の姿を見て、ヒナは言葉を詰まらせた。 「でも、はキライ。ボクをヒナの『初めての男』にして?」 「そ、そんな」  樹の言葉を否定するように、無意識に頭が左右に揺れる。  目尻に溜まった涙が揺れるたびに滴となって頬に散った。  ――――そんなのはムリ。  そう紡ごうとしたヒナの唇を、樹は自分の唇でむりやり塞いだ。  ヒナは瞠目し、ぴたりと動きを止めた。  信じられないものを見るような、そんな眼差しで樹を捉える。  樹は大人しくなったヒナを解放し、濡れた唇をペロリと舐め上げた。
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