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「な、ど、どうして?」
「ウルサいな。なんでそんなことわざわざボクが言わなきゃならないわけ? ホント、バカにしてんの?」
ヒナに向けられた侮蔑混じりの嘲笑。
ゾクリとヒナの背が震えた。
「ダメだなあ。ホント、ヒナは分かってない。そんなこと言われて、男がオンナ諦めるとか思うわけ?」
諦めてくれると思ったヒナは、コクリと素直に頷いた。
樹は深く嘆息して、
「余計、煽られるだけなんだけど。ヒナってどんだけ恋愛経験皆無なんだ。……知ってたけどね」
樹はグッとヒナの首筋を押さえた。
苦しくはないが、まるで首を絞められるような仕草に、びっくりしたヒナの身体が大きく揺れる。
「でもね、そー言う迂闊なセリフ、ボクの前で言わない方がいいと思うな。だって」
ゆっくりと獲物を追い詰めるような残虐さを眸に滲ませながら、樹は恍惚と言葉を紡ぐ。
ヒナはクラリとした。
なんだろう。
頭に靄がかかるような、そんな不可思議な心地に目眩がする。
「ヒナを壊したくなるから」
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