Ⅲ ~天使な悪魔~

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 傲岸に、妖艶に、樹は微笑む。  ヒナは目を瞬かせた。 「そん、な、いつき、くん……? あ、あれ?」  心臓の鼓動が耳に痛いほど響いてくる。  言葉すらうまく出てこない今の状況に、ヒナの頭には疑問符が無数に舞い散る。 「目眩する? だって今、ヒナの頸動脈、ボク押さえてるからね」 「け?」 「わかんないか。ヒナはこのまま、オチるよ。――――今の会話は、全て夢」  ささめくように耳元へと落とされるセリフ。  ――――夢? これは夢だったの? 「う、ぁ?」  視界に掛かる紗が濃くなってゆく。まるで幕引きの緞帳(どんちょう)が下ろされるみたいに、目の前が暗転する。 「おやすみ、ヒナ」  くすりと嗤う気配。  ヒナの身体からくたりと力が抜けて、瞼が落ちた。
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