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「他の男を好きだって? ……ホント、わかってない」
ベッドに沈んだヒナを見下ろしながら、樹は冷ややかな声で呟く。
ヒナが自分以外の男に興味を示すだなんて、嘘でも言ってはならない言葉だと、樹はギリと奥歯を噛みしめた。
考えるだけで気が狂いそうになる。
大切なものを自分の手で壊したくなる。
そんな残酷な感情に心を支配されてしまう。
「ヒナはバカな女だ」
なにひとつ分かってない、バカな女。
でも、頭の悪いバカなヒナが好き。
これ以上なく自分をイラつかせる言葉を吐いても、彼女への想いを捨て去ることなど選択肢にはない。簡単に捨てられる想いなら、こんなに苦労はしない。
自分の中の矛盾が歯がゆい。
「ホント、可愛くて……憎らしいよ」
そう呟く唇が、裏腹な優しい笑みを刻む。
けれど、もう悠長に構えてはいられない。
樹はポケットから携帯を取りだした。
目当ての名前を探してボタンを押す。
ほどなくして、電話の向こう側から知った声が聞こえてきた。
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