Ⅲ ~天使な悪魔~

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         ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「他の男を好きだって? ……ホント、わかってない」  ベッドに沈んだヒナを見下ろしながら、樹は冷ややかな声で呟く。  ヒナが自分以外の男に興味を示すだなんて、嘘でも言ってはならない言葉だと、樹はギリと奥歯を噛みしめた。  考えるだけで気が狂いそうになる。  大切なものを自分の手で壊したくなる。  そんな残酷な感情に心を支配されてしまう。 「ヒナはバカな女だ」  なにひとつ分かってない、バカな女。  でも、頭の悪いバカなヒナが好き。  これ以上なく自分をイラつかせる言葉を吐いても、彼女への想いを捨て去ることなど選択肢にはない。簡単に捨てられる想いなら、こんなに苦労はしない。  自分の中の矛盾が歯がゆい。 「ホント、可愛くて……憎らしいよ」  そう呟く唇が、裏腹な優しい笑みを刻む。  けれど、もう悠長に構えてはいられない。  樹はポケットから携帯を取りだした。  目当ての名前を探してボタンを押す。  ほどなくして、電話の向こう側から知った声が聞こえてきた。
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