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Ⅳ ~揺れる想い~
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……ん」
ヒナは重い瞼を薄く開けた。
なんだか身体がダルい。
ぼんやりと熱を持つ瞼をこしこしと手の甲で擦ってみる。
ふとお腹に違和感を感じてギョッとした。
「いっ」
ヒナのお腹の上に樹の頭がちょこんと乗っかっていた。
お腹をぐるりと抱え込むようにして樹の腕が絡みつき、小さく動いてみるけれど、彼のほっそりとした腕はビクともしない。
一緒のベッドで眠っていたという現状を理解した瞬間、ヒナの身体がピキンと凍り付く。
けれど、お腹の上で薄く口を開けたまま眠る樹の姿が、あまりにも無防備で可愛くて。
思わず口を開けたままポカンと見つめてしまう。
でも、どうして自分は樹と一緒に寝ていたのか。
思い出そうとしたものの、ヒナの記憶には該当するものが見つからない。
胴体部分をがっしりと抱きかかえられているので起き上がることすら出来なくて、ヒナは途方に暮れてしまう。
「そういえば、昨日の夜……」
――――なんか、樹くんに怖いこと言われたような気がする。
『ボクのことを男として見て、好きになって』
確か、そう言われて。
それで、その後、樹はなんと言っていたか。
「えと、9歳で……赤ちゃん、出来たようなこと……言ってた?」
「……出来るわけないだろ。アホかお前は」
下から聞こえた不機嫌な声に、ヒナはビクッと飛び上がった。
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