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「……痛い……ボク、もう……ダメ。――――昨日もこうしてヒナを受け止めたから、骨折したかも」
樹は苦しそうに胸を押さえながら「うぅっ」と呻き声をあげた。そして、ガクリと頭を垂らしてしまう。
腕の中でクタリと力を無くした樹に、ヒナは髪を振り乱し絶叫した。
「ぎゃあ―――ッ!? 誰か誰か、誰か来て――ッ! 樹くんが……死んでしまう――――!?」
「……ボクを殺すなバカ女が。ウルサいんだよ、耳元で叫ばないでくれる? ヒナがボクを家まで連れてってよ。も、今日ガッコ休む」
うっそりと半身を起こした樹に剣呑な眼差しで脅されて、ヒナはウッと言葉に詰まってしまう。
「うぅ、ゴメンねゴメンね。私、おうちまで連れてくね。抱っこが良い? おんぶが良い?」
「……あ゛? ふざけてんの? ボクもう12歳だし。力だってヒナなんかより強いんだよ。背だってそのうち追いつくし。……肩貸してくれるだけで良い」
「わ、わかった」
ヒナの肩に腕を回した樹は、もたれるようにして全身を預けてくる。
ヨロヨロとよろけながらも、ヒナは樹の背に手を添えて彼を支えようと必死になっていた。
樹に全体重を掛けられてフラフラと覚束ない足取りのまま、なんとか上層階用のエレベーターホールまで辿り着くと、やっとの思いでボタンを押す。
ヒナはホッと息を吐いた。
「大丈夫? 歩けないくらい痛い?」
心配そうなヒナの声に、
「うん。痛い痛い」
樹は軽くあしらうように答える。
チンと涼しげな機械音がして、エレベーターに乗り込んだのだけれども。
――――あれ? 樹くん、歩いてる??
ヒナは「ん?」と首を傾けた。
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