Ⅳ ~揺れる想い~

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 逃げを打つヒナの身体を逃がすまいとするように、樹の拘束する力がギュウッと強まる。 「ヒナに10説明しても、理解してもらえるのは、きっと1か2くらいなんだろうな」  ヒナのお腹に頬を押しつけたまま、樹は切ない溜息を零す。 「あっ、今バカにしたでしょ!?  樹くん! 私、ちゃんと昨日のこと、覚えてるんだからね! キキ、キスとか、お風呂で水かけた! も、すっごい怒ってるんだから!」  ヒナは、堪忍袋の緒が切れた! と柳眉を逆立て口をへの字に曲げて、「こんなに怒ってます」と全身で怒りを体現する。  そして、抱き潰さんばかりにしがみつく樹をキッと睨んだ。 「は? なに、寝ぼけてんの? 夢でも見たんじゃない?」  怒り心頭なヒナを、「ボク知らない」とばかりに飄々とした顔で樹は答える。 「え、夢?」  ん? と小首を傾げて、ヒナは昨夜のことを思い返してみる。 「そ。夢、夢。昨夜は何もなかったよ?」  ヒナのお腹の上でうっとりと瞼を落とした樹は、もう話は終わりだとおざなりに答えた。
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