Ⅳ ~揺れる想い~

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 ヒナはキッチンで呆然と立ち尽くした。  力が入らない膝はガクガクしていて足元が覚束ない。  肋骨を破る勢いで心臓がバクバクと太鼓のような音を響かせている。  身体が炎に包まれたように熱い。  熱病に罹ったみたいに、ボンッと音を立てて顔から火が噴き出そうになる。 「……うあ、なに、なになに?」  ふるふると震える掌を擦り合わせて、緩く握りしめる。 「なに? なにこの感じ。……熱い、熱……」  膝が砕けてその場にへたり込みそうになる。  身体の中で燻る熱が取れなくて、もうどうしていいか分からない。  ヒナは冷気を求めて冷蔵庫を開けてみた。  そこに頭を突っ込んで、しばらく火照った顔を冷ましてみる。  涼しくはあるけれど、内側を焦がす熱はちっとも引いてはくれなくて。 「うぅ、シャ、シャワー」  冷たい水を浴びたらこの熱から解放されるかも。  そう思い、ヒナは脱衣所へと駆け込んだ。  脱ぎ捨てるようにパジャマを脱いで、浴室へと飛び込む。  シャワーのコックを捻って、ザーッと頭から水を浴びた。  少しだけ身体のほてりが修まった気がした。  ホッと息を吐く。  ふと見下ろした自分の身体に、ヒナは動きを止めた。 「えっ、あ、あれ?」  自分の腹部、ちょうどおへその横辺りで目が釘付けになる。  点々と浮かぶ赤い痕。 「……虫?」  目視できるだけでお腹に4つ、浴室内にある姿見で確認したら、両胸にも5つ。  紅い染みのような痕があった。 「じんましん?」  赤い痣をちょっと指で掻いてみた。  痒みは感じない。痛みもない。  けれど、尋常じゃない数に怖くなる。  特にアレルギーは持っていないはず。  それなのに、なぜ。  ヒナは不安に顔を曇らせた。 「あ、足、太ももにも」  太ももの内側を見ると、足の付け根、際どい箇所にまでその薄紅色の痕は点々とあった。
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