Ⅳ ~揺れる想い~

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 ベッドの上で横になりながら、ヒナは自分の頬に手を当てた。 「……やっぱり熱い……」  手のひらがひんやりと冷たく感じる。  手のひらも熱を持っていたけれど、それ以上に頬の熱の方が高かった。  今度は額に手を当ててみる。やはり熱い。風邪を引いてしまったのかもしれない。もしかすると、じんましんもそのせいかもしれないとヒナは思う。  昨夜、樹に水なんて掛けられたから?  そう思い、ヒナはムッと唇を尖らせた。 「樹くんは、優しいけどイジワルだ」  シーツを顔まで引き上げて、ヒナはキッチンにいる樹へと意識を向けた。  キッチンから良い香りが漂ってくる。  この香りはきっとクラムチャウダーだろう。  樹はヒナの好きなものを知っている。  だからきっと、樹はヒナの好きなクラムチャウダーを作ってくれているんだろうと嬉しく思う。  ――――樹くんは優しい。けれど、イジワル。  ヒナはシーツにくるまったまま小さく溜息を吐いた。  昨夜の記憶は朧で、あまり思い出せない。  靄に包まれたみたいに、はっきりと思い出せない部分があるのだ。  ただ、樹が別人のようにとても怖かったという記憶ははっきりとあった。  樹はヒナのことが好きだと言った。  それは自分に向けられた、激しいまでの執着・恋慕だったように思う。  彼自身がヒナの身を焦がす熱源のように、熱い、熱い想い。  思い出して、またヒナの身体に熱が灯る。どうしようもなく熱くなる。  もうどうしていいかわからない。  ヒナは思った。  なんで自分なのかと。  ヒナは未だかつてモテたことなんて一度もなかった。  お母さんはヒナのことを可愛いと言ってくれるけれど、それはあくまで身内だからだと知っている。  他人から激しいまでに求められた記憶など、過去の記憶を辿ってみても見つかりはしない。  樹だけだった。 「どうしたら、いいのかな」  ここにきて初めて、ヒナは樹との関係を真剣に考え始めたのだった。
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