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「ヒナ、ごはんできたよ。ヒナが好きなクラムチャウダーも甘い卵焼きも作ったんだよ」
樹の声に思わず「ひゃっ」と声を上げてしまう。ヒナは慌てて樹に視線を合わせた。
「? どーしたの。顔、真っ赤。それに、なにをそんなに焦ってるの?」
ギクリとした。
樹のことを考えていたのがバレてしまったかと思い、ヒナはさらに顔を赤くして、
「あああ焦ってないよ? なんでもないし、何も考えてないし、寝てただけだし、ホントにホント」
えへへと引き攣り笑いを浮かべながら、訳の分からない言い訳じみたセリフをまくし立ててしまう。
「? 変なヒナ。ほら、さっさとおいで」
促されるまま、ヒナは樹に手を引かれ彼の後にしおしおと続いた。
「あっ、すごーい! これ、樹くんが全部作ったの!?」
食卓テーブルに並ぶ朝食を見たヒナの顔がパアッと輝く。
クラムチャウダーにタコさんウィンナー、生ハムサラダにクロワッサン、樹の得意な甘い卵焼き、そして、温かいココア。
ヒナが大好きなものばかりだった。
「母さんが料理好きだからね。見てて覚えた」
樹は照れくさそうな顔で小さくはにかんだ。
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