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樹は、どこに怪我をしてるんだと聞きたくなるほど力強くスタスタと歩き、制服のポケットからカードキーを取りだす。それをエレベーターの差し込み口に入れて「50」のボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まった瞬間、樹はくるりと振り返って、
「……痛い……」
ふらりとよろめく。
「い、樹くん!?」
ヒナは慌てて両手を差し出し、倒れそうになる樹の身体を抱き込んだ。
樹の体重を支えきれなかったヒナの身体が、エレベーターの壁にガツンとぶつかる。
「……きゃっ」
そのまま樹がぎゅうぎゅう身体を押しつけてくるものだから、壁と樹に挟まれたヒナは痛みに声を上げた。
「いたっ! い、樹くん、重たい、よ」
「ヒナがボクに怪我させたんじゃない。――――我慢しな」
声変わりの途中なのか、どこか掠れた甘い声で、中腰になったヒナの耳元に樹は囁く。
「ひぃぃっ」
ぞわりと全身を粟立たせるヒナを見上げながら、樹は満足げにニタリと笑む。
ヒナの両手首を掴み上げ、ガクガク震える彼女の身体を足の間に挟み込むと、完全に動きを封じてしまう。
身動きできないよう1ミリの隙間もないほどに身体を密着させながら、樹はヒナの身体を壁へとグイグイ押しつけた。
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