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「……ねえ、ヒナちゃん。これ、どうしたの?」
寧音の指先が自分の首筋を示していることに気付き、ヒナはハッとした。
「じんましんなんです。きっと昨日食べたホットケーキが悪かったんだと思うんです。樹くんにも食べさせちゃって……ごめんなさい」
悪いものを樹に食べさせてしまったという負い目から、ヒナはしゅんと項垂れてしまう。
「ホットケーキ? ……ふうん。ちょっと見せてみて」
寧音は妙に真剣な面持ちで、首筋に浮いた紅い痣を指先で触れてきた。
「痒い?」
寧音の問いに、ヒナはふるりと首を振る。
寧音の眸が次第に剣呑な色を刷く。
そして、樹をひたと見据え、
「……樹? アンタまさか……」
地の底を這うような低い声で、寧音は言い淀みながら愛息子の名を呼んだ。
「なに、母さん」
「樹ッ!! ちょっと来なさい!!」
顔面蒼白になる寧音に、樹は飄々とした態度で、
「うっさいなー」
気怠げに前髪を掻き上げながら、母親を一瞥する。
「ヒナちゃん! 樹、連れて帰るわね! ホントに……行動がパパにそっくりすぎて涙が出そうよ! なんか本当に、本当に、うちの愚息がごめんなさいッ!!」
何故か寧音が「申し開きのしようもございません!」とばかりに深々と頭を下げるものだから、ヒナは度肝を抜かれてその場に固まってしまう。
呆けたまま固まるヒナに、謝り倒す母親。そんなふたりの様子に、樹は大きく嘆息して、ひと言。
「帰らないって。ヒナ心配だから、ボク、責任持ってちゃんと見とく」
「なんの責任!? このままじゃ違う責任が発生しそうで怖いんだけど!?」
カッと怒りの形相で寧音は牙を剥いた。
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