2644人が本棚に入れています
本棚に追加
『……ヒナは可哀想だね。ボクなんかに好かれちゃって』
『え? なにが言いたいのかちょっとよくわかんないけど……あ、でも、樹くんに好かれて、ヒナは可哀想じゃないよ。嬉しいよ、ありがとう』
『そっか。ボクに好かれて嬉しいって思ってくれるんだ。ありがと。でも、やっぱりヒナは可哀想だよ。だって。Il ne manque pas par tous moyens. Il m'appartient partout dans vie. (ボクからは絶対に逃げられないもの。キミは一生、ボクのモノだよ)』
いきなり樹の口から飛び出した流暢な外国語に、ヒナの顔がパアッと輝く。
『うわー、英語もしゃべれるの!? スゴイね、樹くんは!! 私なんてI am a pencilくらいしかしゃべれないよ!』
と、習ったばかりの英語を喜色満面で披露するヒナに、樹はがっくり肩を落とした。
「いや、これはフランス語……しかも、その英文ありえない。ヒナは鉛筆なの?」
堪えきれず、樹は「ぶはっ」と噴き出すと、演技のにおいのない自然な笑顔を浮かべた。
それは、ヒナが一番好きな笑みだった。
最初のコメントを投稿しよう!