Ⅴ ~罠~

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         ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇  樹はヒナと離れ、振り返らずに足を進めた。  着いた先は、学校近くの古びたアパートだった。  外堀の花壇に植わる木の陰に身を隠し、アパートの2階を見上げながらポケットに手を突っ込む。手に触れる四角い金属を掴んだ。  父親である鷹城総一郎の第一秘書をしている里中徹に頼み、欲しい情報は事前にもらっていた。  大体の状況は把握している。  ほどなくして、視線の先の扉が開く。  樹は手にしたデジカメで、現れた人物を撮影し始めた。 「ちょっと、早くして! 遅刻するでしょ! 純人ッ」  慌てて出てきた女性は、新しく赴任してきた樹のクラスの担任・飯島凜だった。 「はいはい。もー凜はせっかちだなー」  そして、彼女の後に続いて出てきた、モデルのようにバランスがとれた体躯の男。彼は、ヒナのクラスメイト・間宮純人だった。  担任の飯島凜が同棲している相手、それが彼なのだ。  片唇を吊り上げた樹は、ふたりの姿をデジカメで撮影しながら、ふと思った。  あの男が制服を着ていなかったら。  ふたりはきっと、違和感なく普通の恋人同士に見えるだろう。  ――――けれど、自分とヒナは?
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