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誰が見ても、姉と弟ぐらいにしか捉えてはもらえない。
わかりきったことだと理解はしている。
あと数年大人しく待てば解決される簡単な問題だ。
拷問に近しいその時間を耐えたら、ヒナと自分は並んで立っているだけで、恋人同士に見えるに違いない。こんな想いは今だけだ。それも理解している。
けれど、待ってなどいられなかった。
数年という時間の中で、ヒナが自分以外の誰かに奪われてしまうかも知れない。
それだけは絶対に回避したかった。
ヒナと樹、二人の間には時間の差という大きな壁がある。
それが、大声で叫びたくなるほどに腹立たしい。
先ほど会ったヒナのクラスメイト。
あの類という長身な男にも、身を焦がすような憧憬の念と殺意を覚えた。
なぜ自分はヒナと同じ歳ではないのか。
河合や類のように、まだ完成された肉体ではない自分。脆弱で頼りない存在。
こんなにも、こんなにも、どうして自分は子供なのか。
ヒナが抱える大きな荷物を、代わりに持つことすら許してもらえない子供な自分。
それが歯がゆくて、悔しくて、もどかしい。
本当は、余裕など欠片もありはしないのだ。
ヒナだけを求めて、常に激しい渇望を抱えながら足掻くことしか出来ない、愚かな自分。
ずっと、物心ついてからずっと。
ヒナだけを想っている。
愛している。
その気持ちは現在進行形で加速していく。
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