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Ⅵ ~ライバル参戦~
Ⅵ
「おはよ、すみちゃん」
「はよ、純人ー」
教室に入ってきたヒナと類の声に、純人は読んでいた本から顔を上げ「おや?」と不思議そうな目を二人に向けた。
「めずらしいね。ふたり一緒に来たの?」
「偶然一緒になって……私の鞄、類ちゃんがとったんだよ」
「ちげーよ! 紳士な俺様がお前のカバン持ってやってたんだろーがっ」
どこか気落ちしている風なヒナにカッと反論した類だったが、その顔は何故か嬉しそうに紅潮している。
純人はピクリと片眉を跳ね上げた。
「ふうん? 類、今までと同じいじめっ子な態度だと、ヒナ、他の男に奪われるよ? さっさと告ったらいいのに」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる純人に、類がギョッと目をむいた。
「ぎゃ――ッ、な、なにいっちゃってんのクソ野郎! ち、違うから、ヒナ! 俺はヒナみたいなチビッコ全然好みじゃないから! ヒナみたいなバカ女、すっげえ苦手だからッ」
わたわたと、類は顔を赤くしながらそんなことを口走る。
ヒナはムッと顔を顰めた。
「失礼だな。分かってるよ。それに類ちゃんなんて私もゴメンです」
ヒナはぷいっと顔を逸らせた。
「なにを!? 生意気なオンナだなっ!」
怒鳴る類とそっぽを向くヒナ、純人は二人を見比べながら呆れ顔で大仰に嘆息する。そして、純人は類に顔を寄せると、ヒナには聞こえないよう小声で囁いた。
「今チャンスだったのに。勢いで告白したらどう? 鈍いヒナに分かってもらおうなんて絶対不可能だよ。類、何年片思いする気?」
「煩いわ! この天然野郎め!」
「もー、類ちゃん声大きい。言葉汚いよ」
いきなり大音量で叫びだした類から離れ、ヒナはさっさと自分の席に着いてしまう。
「類ちゃん言うな、シバくぞこのガキンチョめ……あれ?」
憤激していた類の動きがピタリと止まった。
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