Ⅵ ~ライバル参戦~

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 あれは確か、中等部の卒業式の時だった。  卒業式に参列していた父兄達を指差して、嬉しそうに頬を緩めた純人がヒナにこっそり耳打ちしてきたのだ。 『オレの卒業式、凜、来てくれたんだ。嬉しい。あそこにいる綺麗なオンナ、あれ、飯島凜。オレの初恋。昔からずっと、オレは凜だけが好き』  ヒナは参列者の中から純人が言う女性を見つけた。  彼女の名前は「飯島凛」。  今、扉の向こう側で、河居先生と対峙している女性と同じ人物だった。  今年の春、彼女は新任教師として初等部に赴任してきたらしい。  『放課後とか、もしかしたら凜に会えるかも知れない』  そう言うと、純人ははにかむように笑った。  純人の両親は仕事でアメリカに渡っており、幼馴染みだという飯島凜の家に、彼は現在居候をしているそうだ。  その話を聞いた類が『好きな女と一緒に住めて羨ましい――っ』と、教室で騒いでいたことを思い出す。   「あ、あ、……イヤ――――ッ」  空気を震わせるような悲痛な叫びに、ヒナはハッと顔を上げた。  沈んでいた意識が現実に戻ってくる。 「うそ……」  目の前の光景に戦慄した。  河合は床に倒れ込む飯島凛の身体にのし掛かり、抵抗する彼女を力づくで押さえつけてる。  ヒナはゾッとした。  冷たい汗が全身から噴き出すようだった。  ――――リンさんが襲われてる!?  抱えていた鞄が、ガタッと音を立てて床に転がった。
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