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「……うぅ、よかった……」
――――すみちゃんが行ってくれたから、きっともう大丈夫。
ヒナはホッと安堵した。
張り詰めていた緊張の糸が解けて、ヒナの目からポロポロと大粒の涙が溢れ出す。
「うぅ……、ぅわ――――んっ」
「ヒ、ヒナ!? おい、大丈夫か!?」
ヒナは子供のように大声で泣き出した。
類はオロオロとしながらも、号泣するヒナの背中をぎこちない仕草で優しく撫でてやる。
教室の窓から差し込む陽が、床に反射してオレンジに色を変え始めていた。ヒナはオレンジに染まる足元を見つめたまま、類に促され、ポツリポツリと先ほどの出来事を話し始めた。
「河居先生があんなヒドいことする人だって思わなかった……最低、最低だよ、キライ……大嫌い!」
話す内に美術準備室での詳細をまざまざと思いだしてしまい、ヒナは再び声を荒げてしまう。
嗚咽混じりでたどたどしいヒナの言葉に耳を傾けながら、類は考え込むようにして眉根を寄せた。
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